世界一有名な横断鋪道
大英博物館を出ると、いよいよあの世界一有名な横断鋪道ヘ向かう。そう、アビーロードだ。ビートルズのアルバムの中で最大のセールスを記録したというあのアルバム。ビートルズとの出会いのところでも書いたが、私のフェイバリットである。(あまりに有名過ぎてこう書くのも恥ずかしいが、やはり好きなものはすきなのだ)
そう言えば、我々がグループを結成して初めて作ったオリジナルアルバムのジャケットはアビーロードをパロッたものだった。近所の車通りのほとんど無い横断鋪道でメンバーが歩くところを写真におさめた。もちろん道路の左端、向こう側に私の愛車を止めておいた。(当時乗っていたホンダの軽自動車)何から何まで憧れていたあのアビーロード。
徒歩でどれくらいかかったであろうか?結構、歩いた。そしてついにそこにたどり着いたのである。
工事中なのだろうか?鋪道の横に三角の白線が引いてある。そして、EMIのスタジオの壁には無数の落書きだ。
世界各地からやってきたビートルズファンのものだが、日本人のもの数多くある。私はボールペンを取り出すと、その壁に向かって私が存在したことの証を描き始めた。
M・Aはビデオをまわす。「さて、彼は何とサインするのでしょうか?何々?H・S上陸?おっと、自分の似顔絵入りだ!」そう。私の描いたサインが今、そこにあるのだった。と、すると地元のご婦人が通りすぎる時に私に声をかけた。もちろん英語。彼女は道端に落ちている空き缶を指差して何か言ったのだ。どうやら「ゴミを散らかすな」ということらしい。「No!」と答えたのだが、婦人は行ってしまった。恐らく、多数訪れるビートルズファンがうっとしいのだろう。いや、ファンのマナーが悪いのかもしれない。
サインのあとやることはやはり決まっている。彼らが歩いた横断鋪道を彼らと同じように歩くこと。ジョンが好きな私はポケットに手を突っ込み、やや猫背になりながら。そして、ポールが好きなM・Aは裸足になり、煙草を手に持ちながら。それにしてもロンドンの運転手のマナーは良い。流石に紳士の国だ。横断待ちをしていると必ず止まってくれる。(ただ、これは写真を撮るのには適しない。そして、止まられたら渡らないわけにはいかない。そんなことを何度も繰り返してしまうという悪循環)
それにしても、タイミングよく大股で闊歩する写真を撮るのは容易ではない。一人でも難しいのだから、4人であのジャケットを撮影するのも大変だったろうななどと考えた。(失敗した写真が載っている本を見たことはあるが…)ここで、あの素晴らしい曲がレコーディングされたのかと思うと、胸の高鳴りを押さえきれなかった。M・Aは例のごとくゴールデン・スランバーを口ずさむのであった。