キャバーン・クラブ〜マシューストリート
われわれはさっそくマシューストリートにあるキャバーンクラブへ。
本当に細い通りがマシューストリートである。よく気をつけていないと見逃してしまうような目立たない路地。人通りは少なく、破けたポスターが風で通りすぎて行くような閑散とした雰囲気。予想していたものとは違った。観光地、名所といった仰々しいものは全く無く、まるで路上に昔の喧騒を染み込ませて淡々と時を刻んできた歴史の空気さえ感じるのは何故なのか?飾らないで街の中に溶け込んでいる風景こそがその重みを残しているのだろう。
そして、その中に閉鎖され、古びれたキャバーンの入り口があった。
今は入ることができない、いかにも「潰れてしまったライブハウスの呈をなしている。よく見ると入り口の上に地味なモニュメントがあり、入り口の壁には「4人の若者が世界を震わせた〜」という銀盤の記念碑がある。そう、「良く見ると」気付くのである。ちょっと見た目にはまさに「寂びれた」ものであり、それがまた、妙なリアルさを持って迫ってくる。ビデオをまわす手が震える。この細い通りにあふれんばかりに人が並んだのである。そのモノクロ写真がそのままそこにある。
路地を挟んだスタンリー・ストリートにエリナー・リグビーの像がある。ポールはこの曲を気に入っている。来日コンサートのたびにアコースティックでやっている。青銅の佇まいが美しい旋律と物悲しい歌詞とマッチしている。M・Aはやはりここでも「All The Lonely People〜」と口ずさんでいた。
キャバーンのある場所からマシューストリートを挟んで向側にキャバーン・ワークスという建物がある。その地下に再現された新しいキャバーン・クラブがある。1999年にポールが凱旋公演をやったところだ。(そういえばバックが凄かったね。イアン・ペイスとかデイブ・ギルモアとか)階段を降りて行くと煉瓦造りのあのアーチ型のステージが見えた。誰もいない。店員すら見当たらない。(後日調べたら平日は夜のみの営業ということだった)
M・Aと交互にステージに立って写真を撮ったりしながら、何となく違和感を覚えた。いかにも観光用に作られた安っぽさを感じるのだ。それまで、どこへ行っても街の中に溶け込んでいた景色がここだけ浮いて見える。とりあえず、夜にまた来ることにしてキャバーンを出た。
再びマシューストリートに出て通りを歩くとビートルズショップの看板が目に入った。
看板の上にある4人の似顔絵が何とも言えない。本人達がみたらさぞ赤面してしまうだろうと言う感じだ。日本ではまるで写真のような絵が多いが、外国では寧ろ「絵」らしく描くのであろうか?(関係ないかもしれないが、絵の修復をするのに、日本では全く分からないようにするらしいのだが、ヨーロッパではわざと修復した場所が分かるようにするらしい。どちらが現物を大切にしているのか?考え方が違うものだと思った)
これも地下に降りて行く。見た感じは原宿のゲット・バックとさほど変わらない。これも後で聞いた話だが、レアものはストックしてあって、店長と交渉次第ということらしい。何事も事前に調べておくのが良いのかもしれない。無計画な我々が反省すべきところである。(と言っても反省は生かされないのだが…)